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自筆で何度も何度も書き直した申立書に思いをつづった。
「なぜ私だけがあの日のことを忘れられなくて前に進めないのか」
送り先は、検察審査会(検審)。検察官が捜査した事件を裁判にかけず不起訴処分とした場合、被害者の申し立てなどを受けてその判断が正しかったのかを、選挙権をもつ国民の中からくじで選ばれた11人が、審査する。
あの日――。2022年10月30日の深夜。福岡県春日市で女性(27)は「殺される」と思った事件に遭った。
ジョギング中、背後から走ってくる見知らぬ男に気づいた。恐怖を感じて振り向き、後退したところ尻から転倒。覆いかぶさられた。
約6秒間。男は顔の横に両手をつき、馬乗りの状態で見つめてきた。男が横に座り込んだすきに逃げ、通りかかったパトカーに助けを求めた。
翌11月、強制わいせつ未遂容疑で男(当時37)が逮捕された。「酒に酔い、覚えていない」という。
勧められた示談
福岡地検で何度か事情聴取を受けた。感じたことは「自分の被害は軽い」と見られているということだった。
検事からは、覚えていることについて細かく話を聴かれた。だが、こうも言われた。
「あなたは触られていない」
「証拠が不十分。起訴しても…